速報:老朽美浜原発差止認めず

2024年3月15日

本日、大阪高等裁判所(長谷川浩二裁判長、原司裁判官、大河三奈子裁判官)は、抗告人らの申立てを退け、関西電力美浜原発3号機の運転の停止を認めませんでした。

弁護団声明をアップしました。(24/3/18一部訂正したものに差し替え、PDFもアップしました)

決定要旨[PDF]

決定(目録略)[PDF]


弁護団声明[PDF]

弁護団声明
(大阪高裁による即時抗告棄却決定について)

2024年3月15日

                         老朽美浜原発3号機運転禁止仮処分弁護団

1 本日、大阪高裁第11民事部(長谷川浩二裁判長、原司裁判官、大河三奈子裁判官)は、住民らが、美浜原発3号機の運転差し止めを求めていた仮処分事件の即時抗告審において、住民らの即時抗告申立を棄却した(以下「本件決定という。」)。
2 本件決定の概要は次のとおりである。
(1)地震について
  ア 本件決定は、震源極近傍地震動の問題につき、次のとおり判旨した。
   a 極近傍の距離について、新規制基準は原子力規制委員会の個別判断にゆだねた。
   b 熊本地震において震源極近傍でも現行のレシピによる地震動評価が可能であるとの研究結果 が示されたことから、原子力規制委員会が本件発電所が震源極近傍に当たらないと判断したのは不合理でない。
   c 野津意見書の内容は、これを否定する意見書が相手方からでているから、直ちに採用できない。
  イ 仮にaの判断が許されるとしても、個別判断においては、学説の状況等多面的に考慮しなければならない。抗告人らが多くの論文が震源極近傍地震動を「数km」ととらえていることを立証したことを軽視し、熊本地震の評価だけを根拠に結論を出したのは偏頗と評せざるを得ない。
 また、野津意見書を、これと異なる意見書があることだけから否定するのは不合理である。
  ウ 繰り返し地震につき、若狭地方で繰り返し地震がおこる現実的可能性を否定し、仮に起こっても、塑性ひずみを許容していることを認めながら、「容易に破断しないだけの強度が要求されている」と相手方の主張をうのみにした。
 能登半島地震で、地震に対する知識がまことに不十分であることが実証されたのに、その事実から全く教訓を学んでいない決定である。
(2) 避難計画の不備欠落について、本件決定は、本件は美浜原発3号機を運転するという本来行使できる権利を直接制約することが認められるかどうかを判断する民事保全の手続であるから、抗告人らの申立が認められるためには、原発自体が安全性に欠け、放射性物質が本件発電所の外部に放出される事態が発生する具体的危険性があることの疎明を要するが、このことについて疎明があるとは言い難いから、避難計画の不備について検討するまでもない旨を判示した。
 しかし、原発の運転は、それによって住民らの生命、身体、生活に多大なる影響を与えることから、本来禁止されているのであって、許可を受けて初めて運転が許されるのである。住民らの生命、身体、生活が害される危険がある場合にまで許可を受けた行為(原発の運転)が許されるものではない。そして何より、福島原発事故の教訓を全く踏まえず、原発は本来的に危険なものであるということを忘却したものであり、安全神話への逆戻りであると言わざるを得ない。
 そして、原発の安全性は、現行の法規制上、第1から第5の防護階層によって確保されることとされている。第1から第5の防護階層がそれぞれ独立して有効に機能することが要求されており、また各防護階層の一つでも不備欠落があれば、原発の安全性は確保されていないのである。これは、船舶が救命ボート等の救命設備を装備していない場合に航行を許可されないことと同じである。
 したがって、第1から第4の防護階層に問題がなくとも、第5の防護階層(避難計画)に不備欠落があれば、原発の安全性は確保されておらず、住民らの人格権侵害の具体的危険は認められるのである。
 本件決定は、令和6年能登半島地震によって改めて明らかになった避難計画の不備欠落、すなわち屋内退避もできず、避難もできないという重大な欠陥・欠落を見過ごしたのである。この誤りは、到底許されるものではない。
(3)本件原発の老朽化問題については、過酷な環境下で長期間運転されているにもかかわらず、新規制基準が定める対策に不合理な点はなく、特別点検等においても運転に懸念を生じさせるような劣化等は認められないと確認されていると、相手方の主張をなぞるような内容である。
 しかし、決定では、使用されている材料等設備の経年劣化が懸念されることは否定できないとも述べており、膨大な機器や配管で構成される原発の老朽化の懸念が払拭されたとは到底いえない。中性子の照射による原子炉の脆化や疲労、腐食等の劣化は検査等により検出できない場合もある。
 また、主給水ポンプの耐震性がSクラスとはなっておらず、原子炉を冷やす補助給水システムに切り替えるには手動を含む複数の工程を踏む必要があり、原子炉を冷やすという過程に問題があるとの指摘に対しては、補助給水ポンプについては運転開始後60年時点で基準地震動に対する耐震安全性が確認されていること、従業員らが手動での作業を試みることになる可能性については、短期対策がされているということや様々な対策を講じており、その対策についての規制委員会の判断に不合理な点がないとしている。また、重大事故等の対策要員が確保され訓練等もされているとして、抗告人らの主張を排斥した。
 しかし、地震等の重大な災害時には、不測の事態の発生は 十分にあり得ることであり、事前にあらゆる事態が想定され、対策通りに手動での対応ができる保証はなく、老朽化の問題が考慮されいてるとも言い難いものである。
 我々はこのような不当な決定に屈することなく、脱原発の闘いを続けていくことを表明する。

以上


司法大観より

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