大飯原発の敷地内について、規制委員会の責任でトレンチ掘削等を行うことを求める声明

2013年8月30日

大飯原発破砕帯調査についての声明を出しました。


 

 関西電力は、8月19日の第5回評価会合で、新たに掘削した南側トレンチ東端で見つかった破砕帯をF-6と断定し、この破砕帯が23万年前の火山灰を含む地層に変位を与えていない等を根拠に、F-6は活断層ではないと主張している。新聞報道では、このことだけであたかも関電の主張が認められ、F-6破砕帯は活断層ではないと断定されたかのように報じられている。

 しかし、19日の第5回評価会合では、関電の主張に対して各委員から多くの疑問が出され、関電の調査と判断に対して、委員達は納得していない。 関電は、南側トレンチの破砕帯と山頂トレンチの破砕帯の活動時期を同一のものとしている。これについて、複数の委員から次のような疑問が出されている。

 渡辺満久委員は、「南側トレンチの破砕帯は完全に固結していた。他方、山頂トレンチで確認された破砕帯は『極めて軟弱な破砕帯』である」、そのため山頂トレンチで確認された破砕帯の「新しい時代の動きを否定できない」と指摘している。重松紀生委員は、断層面の運動方向の痕跡(条線)から、山頂トレンチの応力と南側トレンチの応力データが一致しないと指摘し、関電に対して山頂トレンチ破砕帯の活動時期を評価するよう求めた。

 新基準では、12~13万年前以降の活動が確認できない場合の評価について、「後期更新世以降の活動性が明確に判断できない場合には、中期更新世以降(約40万年前以降)まで遡って地形、地質・地質構造及び応力場等を総合的に検討した上で活動性を評価すること。なお、活動性の評価に当たって、設置面での確認が困難な場合には、当該断層の延長部で確認される断層等の性状等により、安全側に判断すること。」(「設置許可基準規則」3条3項の解釈。)とされている。

 この「設置面」とはこの場合、非常用取水路が該当し、その延長部である山頂トレンチの「断層等の性状等」から安全側に判断するとすれば、やはり山頂トレンチの破砕帯が固結しておらず「極めて軟弱」であるという性状を重視し、「将来活動する可能性のある断層等」と評価されるべきである。

 規制委員会の判断の過程で、意見が分かれ一致しない場合、少数意見であっても、より安全性に配慮すべきであるという委員会内外の見解が示された場合、たとえば敷地内の断層が活断層であるかどうかについて、委員や委嘱した専門家の間で意見が分かれたような場合、委員会としては、原発事故を未然に予防するという観点からは、安全側の判断を行うべきである。

 地震を争点とする原発訴訟において唯一の勝訴判決となった志賀2号機地裁判決(金沢地裁平成18年3月24日、判時1930号25頁)は、人格権侵害行為の差止請求の一般原則どおり,原告らは,本件原子炉の運転により,原告らが規制値……を超える放射線を被ばくする具体的危険があることを主張立証すべきとした上で,「原告らにおいて,被告の安全設計や安全管理の方法に不備があり,本件原子炉の運転により原告らが許容限度を超える放射線を被ばくする具体的可能性があることを相当程度立証した場合には,公平の観点から,被告において,原告らが指摘する具体的危険が存在しないことについて,具体的根拠を示し,かつ,必要な資料を提出して反証を尽くすべきであり,これをしない場合には,上記……具体的危険……の存在を推認すべき」と判示した。

 原発訴訟においては、証拠が被告電力会社側に偏在していることだけでなく、原発事故の潜在的な被害が巨大で、時間的空間的に不可逆であって取り返しがつかないことに鑑みれば、危険性を指摘する意見に対し、そうした危険が存在しないことの立証の負担を被告側に課す志賀原発2号機地裁判決の判断枠組みこそが、訴訟だけでなく、規制機関の判断の基準ともされなければならない。

 大飯原発活断層調査においては、第5回評価会合で、関電の過去の調査がずさんであり、新たな調査も300mのトレンチを掘るように求められながら70mと短くしてしまい、自らに都合のいいデータだけでF-6は活断層ではないと強引に結論づけている関電の姿勢に大きな問題があることが浮き彫りとなっている。

 山頂トレンチの破砕帯の活動年代、南側トレンチの西側に破砕帯が存在する可能性等からして、安全側に立てば、耐震Sクラスの非常用取水路の下を通る破砕帯について、規制委員会は「将来活動する可能性のある断層等」と判断するべきである。

 そのような判断が現時点では困難だというのであれば、すくなくとも、規制委員会は、原発事故を未然に防止するという自らの任務に忠実に、調査範囲等を関電任せにしている現状で改め、島﨑邦彦委員長代理が当初求めたように、また多くの委員が懸念を表明している南側トレンチ西側の掘削などを実施し、その上で、規制委員会として、慎重な調査と評価を行うべきである。

 

2013年8月30日

 

                                    脱原発弁護団全国連絡会

                       共同代表 河合弘之

                                              共同代表 海渡雄一

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