声明  福島事故から何も学ばなかった大阪地裁裁判官に強く抗議する

2013年4月16日

 

本日の大阪地裁の決定に対して声明が発表されました。


 

1 大飯原発の再稼働を合法化できる法的枠組みは存在していなかった

 全国の原発が原子力規制委員会の新たな安全基準に合格するまで、運転の再開が認められていない中で、政治的な判断の下で大飯原発3,4号機だけが再稼働を認められてきた。
大飯原発3,4号機について、規制委員会の判断はなされていない。同原発の運転を是認できる法的な根拠はないと言って良い。今回の司法判断は、他の原発には適用を放棄されているストレステスト基準について安全性に関する基準として合理性があるとしたが根本的な疑問がある。依拠できる国の専門機関による判断がないままで、事業者の主張に基づいて安全判断がなされたことに重大な疑問を提起せざるを得ない。

2 安全性の立証責任は被告電力会社にあった

 決定は、「F-6破砕帯が活断層であることを認めるに足りる事情は見当たらない。」「クリフエッジ(安全限界)である11.4メートルを超える大津波が襲来する可能性を認めるには足りない。」とする。しかし、破砕帯に関しては規制委員会は今も結論を留保して調査を継続中である。司法機関としては、専門家の間で意見が分かれているような事項については、より安全サイドに立って疑問が払拭されていない以上危険性があるという判断を示すべきであった。このような姿勢の欠如こそが多くの原発裁判が提起されながら、司法が福島原発事故を防ぐことができなかった最大の問題点である。またしても、司法は次なる重大事故につながりかねない重大な誤りを犯したといわざるを得ない。

3 制御棒挿入時間について

 決定は「本件発電所において制御棒挿入時間につき許容値を2. 2秒とする定めはなく,2. 2秒は,安全解析評価上の観点から設定された時間であり,安全性に対しては一応の評価の目安となる時間にすぎず,これを超えたとしても直ちに具体的危険性が肯定されるものではない。また,3連動の地震が生じたとしても,制御棒挿入時間が2.2秒を超えると認めるには足りない。仮に制御棒挿入時聞が2.39秒であるとしても,具体的危険性があると認めるには足りない。」とする。
 しかし、許容値を超えれば、安全性を維持することができることは困難となる。これを超えても危険性が肯定されないという判示は、許容値のもつ重要な安全上の意義を無視した危険な考え方である。このような判断を行っていたのでは、次の重大事故を防ぐことはできない

4 私たちは全国の法廷で市民の生命と安全を守るために闘い続ける

今回の決定は3.11後の原発の安全性の実体をめぐる最初の司法判断であった。ここで、正しい判断が示されなかったことは残念であるが、脱原発弁護団全国連絡会は、このような不当な判断に怯むことなく、司法による原発運転停止の判断を勝ち取り、全国の法廷で市民の生命と安全を守るために闘い続けていくことを宣言する。

2013年4月16日
               脱原発弁護団全国連絡会
                    共同代表 河合 弘之
                     同   海渡 雄一

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