趣旨・経緯

過去約40年もの間、原発差止裁判を担ってきた弁護団は、各地での闘いに精一杯で、情報交換や相互の協力をほとんど行ってきませんでした。

各地の弁護団は、文献を読み込んだり専門家を招いて勉強会を重ねるなどして原発に関する専門的知見や裁判書面を作成してきましたが、その資料や知見はその裁判限りとして埋もれてしまい、同時に進行している他の原発訴訟や、次代の原発訴訟にまったく活用されない状況でした。

しかし、3.11の東日本大震災とこれに伴う東京電力福島第一原発の過酷事故をきっかけに、このような非効率な訴訟活動を反省し、互いに情報交換をして助け合おうと全国的に、過去、現在、そして今後取り組みたいと考えている若手弁護士にもあまねく声をかけ、平成23年(2011年)7月16日に結成されたのが、「脱原発弁護団全国連絡会」です。

呼びかけに応じて加入した弁護士は北海道から九州まで130名余にも上り、東京で行われた結成会には50名以上もの弁護士が全国から結集しました。現在、約170名の弁護士が加入しています。団体加入も含めると300人にもなります。

日々解析と究明が進められている福島原発事故の現象や問題点は、すべての原発訴訟で共通となるものです。そこで、脱原発弁護団全国連絡会では、これを踏まえた裁判書類や証拠資料を一元化して集約し、全国の弁護団が共有することを目指すこととしました。この共有書面を参考にそれぞれの原発独自の事情や地域の実情を付加して、各地の裁判で闘うこととなります。

また、今後、多くの原発差止訴訟が進行していくにつれ、学者や原発の設計者など専門家へ証言や助言を依頼することが多くなると予想されます。そのようなとき、各地の弁護団がバラバラに協力を依頼するのではなく、共通の論点の証言は互いの訴訟で共有することで、証人を引き受けてくださる専門家の方々の負担を少しでも軽減することも、私たちの重要な課題です。

私たちは平成23年7月の結成以降、おおむね2か月ごとに、東京や全国各地に結集して勉強会や合宿を開催し、各訴訟の現状や課題の報告を議論したり、専門家を招いて学習会や各地の原発立地で活断層などを実地で見学するなどの活動を行っています。

脱原発弁護団全国連絡会 共同代表
弁護士 河合弘之
弁護士 海渡雄一