原子力規制委員会による入倉・三宅(2001)式適用の見直しに関する要請書

2016年6月23日

本日、脱原発弁護団全国連絡会は、以下の要請書を原子力規制委員会へ送りました。


 

原子力規制委員会による入倉・三宅(2001)式適用の見直しに関する要請書

 

                          平成28年6月23日

原子力規制委員会 御中

                脱原発弁護団全国連絡会 共同代表 河合 弘之

                            同    海渡 雄一

 

 御庁の石渡明委員及び田中俊一委員長は、島崎邦彦・前委員長代理との面談を経た上で、平成28年6月20日の会合において、大飯原発の基準地震動評価につき、入倉・三宅(2001)の式を他の式に入れ替えて計算をし直すよう、原子力規制庁に指示をされました。

 島崎氏は、委員退任後、1年以上にわたり入倉・三宅(2001)の式による過小評価のおそれを学会で繰り返し警告していました。そうであるにもかかわらず、名古屋高裁金沢支部の裁判に島崎氏の陳述書が提出されるまで、御庁がこれを無視し続けてきたことについては、改めて強く非難するとともに、遅きに失したとはいえ大飯原発の基準地震動を見直し始めたことについては、一定の評価をしたいと思います。

 ただ、大飯原発の断層モデルについては、入倉・三宅(2001)の式を他の式に入れ替えたとしても、なお問題が残されています。つまり、地震調査研究推進本部地震調査委員会が平成28年6月10日付けで発表した「震源断層を特定した地震の強震動予測手法」(レシピ)12頁の記述にしたがう限り、大飯原発の基準地震動にもっとも影響を与えるFO-A~FO-B~熊川断層(63.4km)は「長大な断層」に当たらないため、「長大な断層」に暫定値として適用されるFujii and Matsu’ura(2000)に基づく震源断層全体の静的応力降下量3.1MPaを適用すべきではありません。しかし、関西電力は、FO-A~FO-B~熊川断層を「長大な断層」として上記式を適用しているため、震源断層全体の静的応力降下量が3.1MPa、アスペリティ応力降下量が14.1MPaに過小評価されています。原子力規制委員会は、入倉・三宅(2001)の式に限らず、この点も含めあらゆる新知見に基づき、大飯原発の基準地震動を審査し直すべきです。

 また、入倉・三宅(2001)の式による過小評価の問題や、レシピ改訂に伴う再評価の必要性は、大飯原発だけに止まりません。原子力規制委員会は、既に設置変更許可が出された原発を含むすべての原発について、これらの新知見に基づく基準地震動の再評価を徹底的に行うべきです。

 以上を要請いたします。

要請文(pdf)

6月8日、島崎氏の陳述書を提出した大飯控訴審口頭弁論期日後の記者会見(金沢弁護士会館)

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