老朽美浜差し止め認めず
本日、名古屋高裁金沢支部第1部(民事)(大野和明裁判長、升川智道裁判官、山田兼司裁判官)は、関西電力老朽美浜原発3号機の運転差し止め仮処分の即時抗告申立てをを棄却しました。※弁護団声明を掲載いたしました(*12月1日11:10更新)
決定 【PDF】*決定要旨、骨子の配布なし
名古屋高裁金沢支部の前で旗だしする抗告人ら。
美浜3号機・名古屋高裁金沢支部決定についての声明
2025年11月28日
老朽美浜3号機運転禁止仮処分弁護団
1.本日、名古屋高等裁判所金沢支部(裁判官:大野和明、升川智道、山田兼司)は、関西電力の美浜3号機について、原決定変更・運転差止を求めた住民らの抗告を棄却した(以下「本決定」)。東京電力福島原発事故の悲劇を二度と繰り返してはならないという住民らの願いを踏みにじる不当極まりない決定である。
本決定は、日本の法律が原発の運転を許容していることから、原発の運転の一般的な可否は、立法府及び行政府の判断によって決定されるべきものであり、第一次的には原子力規制委員会の判断にゆだねられ、裁判所の役割は「限定的なもの」と自らを縛った。その上で、裁判所がその運転の差し止めを命じることができるのは、住民の生命、身体等の人格的利益が侵害される具体的危険の疎明を要するとし、しかも、従前の裁判例の大勢と異なり、その立証責任を全面的に住民に課した。
何が「具体的危険」であるかは、一義的には明らかでない。地震の発生、その他、原発事故の予測に関する主張は、抽象的にならざるを得ない。伊方最高裁判決は、基準が不合理であり、適合判断が不合理であれば、設置許可処分を取り消すべきものし、従来の民事差止訴訟の裁判例は、これに倣ってきた。基準の不合理性、適合判断の不合理性があれば、それは「具体的危険」と評価すべきなのである。ところが、本決定は、詳細な検討をすることなく、抗告人らの主張をすべて抽象的な危険を述べるものとして一蹴したのである。震源極近傍地震動の問題については、一行も触れていない。
本決定は、今後も重大な原発事故が発生する可能性を否定できないと述べながら、原子力の平和利用を推進することが我が国の法体系であるとして、運転を許容した。東京電力福島原発事故と同様の事故が起こっても、法律が原発の運転を認めているのだから、それはやむを得ず、司法はそれを止められないというのである。司法は、自ら立法、行政のしもべとなったというべきである。
2.本決定は、地震動評価には三つの特性(震源・伝播経路・サイトの特性)に関し、地域性の違いを十分に考慮することが必要であることを挙げ、地震観測記録と比較して基準地震動が低水準であるとはいえない旨判示している。
しかし、そもそも東日本壊滅の危機を生じさせた東京電力福島第一原発事故の被害に照らせば、原発の耐震安全性の要である基準地震動は極めて又は相当高水準にあることが要求されるはずである。また、客観的に計測等された多数の地震観測記録の数値が存在する以上、その中で基準地震動がどの程度の水準にあるかという評価は客観的に可能である。
そして、本件原発の基準地震動993ガルは多数の地震観測記録と比較して極めて又は相当高水準にあるとは言えないことは客観的に明らかである。
本決定は、東京電力福島第一原発事故の被害の甚大さ、そして、二度と同様の事故を起こさないために原発には高度の耐震安全性が求められるという当然の社会的要請を無視し、むしろ、再度の原発事故の惨禍を招く内容であって到底容認できない。
3.長期間運転した原発においては、膨大に使用されている機器や配管の劣化は避けられず、その劣化管理は困難であり、配管の減肉等の発覚が遅れること等により耐震性にも影響がある。本決定は、このような主張に対して、具体的な理由を述べることなく、相手方の疎明を覆すものでないとした。また、本件原発において2024年(令和6年)10月に発覚した配管の減肉事故では、定期検査の間隔では発見できないほど短期間で急速な減肉が生じることが明らかになったが、同事故の発生した配管内には放射性物質を含まない海水であり、同事故によって本件原発の具体的危険性を直ちに推認させるものではないなどと判断した。そして、相手方の原因分析や対策等について原子力規制委員会が特段問題としていないこと等の事情を踏まえ、本件原発の具体的危険性を認めるに足りる疎明はないとした。本決定は、配管の減肉自体は不可避的に発生する老朽化事象であることを認めながら、それによる耐震性低下の危険性には何ら言及がなく、老朽原発の危険性を軽視するものと言わざるを得ない。
4.しかも、本決定は、避難計画の問題について、原子力災害対策特別措置法等の関係法令が深層防護の考え方に基づくものであることを認める一方で、「避難計画に不備があることのみをもって、(人格権侵害の具体的危険)があるとはいえない。」と深層防護の考え方に反する判示をした。矛盾した判示であると言わざるを得ない。
2024年(令和6年)元日の能登半島地震は、現在の避難計画が、地震による原発事故時には機能しないことを明らかにした。本決定は、原発事故の原因(地震)を確実に予測できない点を看過し、原発のリスクを野放しにし、住民らの生命、身体の保護を放棄するものである。本判決は、事故が起きる具体的危険が認められないから、避難の必要性はないとして、避難計画の合理性の有無について検討さえしていない。
5.私達は、本決定を到底認めることは出来ない。今後も、ごく近傍に活断層がある美浜原発の危険性を訴え、その差止に向けた動きを市民と共に続けていく。
以上
※11月28日に記者会見・報告集会で配布した弁護団声明を改定しています。
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