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脱原発基本法 各党案勢ぞろいへ

2013年3月21日

脱原発基本法 各党案勢ぞろいへ

脱原発法制定全国ネットワーク

事務局長 海渡 雄一

 参議院選挙前に脱原発基本法案をめぐり、国会内での動きが活発になってきた。

 3月19日の東京新聞に「脱原発法基本法案」の提出についての宮尾幹成記者による解説記事が掲載された。生活の党のはたともこ、森ゆう子、みどりの風の谷岡郁子、社民党の福島みずほの女性議員ががっちりとスクラムを組んだ笑顔の写真入りのインパクトのある記事であった。

 法案を提出したのは生活の党・社民党・みどりの風の3党と無所属の糸数慶子議員。これに民主党の4人とみんなの党の4人が賛同し合計26名の賛成・賛同による提案である。東京新聞の記事では「野党第1党の民主党はこの時こそ存在感を示すべき」「野党共闘が実現すれば原発維持を鮮明にする安倍政権へのけん制となりうる」とし、民主党とみんなの党が賛成すれば、参議院では可決される可能性があるとしている。

 この記事を受けて民主党は19日のエネルギー・環境調査会(会長・枝野幸男元経済産業相)で早速動きがあった。3月20日の城島建治記者による東京新聞「民主、脱原発法案提出へ」との記事から少し引用してみる。「民主党は19日のエネルギー・環境調査会(会長・枝野幸男元経済産業相)で、2030年代に原発ゼロを目指す「脱原発基本法案」(仮称)を参院に提出する方針を決めた。」とされる。「脱原発基本法案は、民主党が政権与党時代の一二年九月にまとめた「革新的エネルギー・環境戦略」に沿った内容にする。」とされている。「戦略は30年代の原発ゼロを柱に(1)原発の新設・増設は行わない(2)四十年を超えた原発の稼働は認めない-などを掲げていた。」

 一連の東京新聞の報道にも言及されているが、野党が脱原発で大同団結できれば多数を占める参院で法案を可決できる可能性もでてきた。原発の維持さらには新増設までひた走ろうとしている安倍政権との間で明確な対立軸にできる可能性が出てきたのである。

 現在、生活の党、社民党、みどりの風の三党が既に提出した脱原発基本法案は脱原発を「20年を目標として、遅くとも25年までに実現しなければならない」と明記し、原発の新増設の禁止も盛り込んでいる。今後の議論は脱原発の目標達成の時点をめぐる各党間の連携が可能かどうかである。東京新聞の記事は、「三党は民主党に対し、先に提出した脱原発基本法案に賛成するよう呼び掛けていた。民主党は十九日の調査会で対応を議論した結果、「原発ゼロは三○年代が現実的だ」として、独自に法案を提出することにした。しかし、法案修正の余地はあるとして、今後、他の野党とも調整を進めていく方針だ。調査会の古川元久会長代行は「脱原発の方向性は同じだ。野党連携を模索したい」と述べた。」としている。

 民主党が独自に脱原発法案の提案を検討開始したことは歓迎すべきことだ。もともとの革新的エネルギー・環境戦略の検討では、「2030年」で決められようとしていたのが、民主党が与党であったこともあり、政府機関や党内の原発推進の動きとの妥協で「代」という余計な文言が付加された経緯があった。三党案と2030年なら5年の違いで調整の余地は十分ある。現実のエネルギー需給をみても、南海トラフの巨大地震の想定される甚大な被害などをみても、原発を再稼働する必要性はないし、リスクが大きすぎる。原発廃止後の立地地域の経済や電力企業の経営体制などに配慮して、廃止のためのリードタイムを取る必要があるとしても、「2030年代」という民主党の提案は、あまりにも時間がかかりすぎだ。民主党は早期の脱原発を求める市民の声に応え、三党の案に歩み寄るべきではないか。そして、脱原発法に賛成している三党だけでなく、第3の脱原発法案を準備中とされるみんなの党も含め、3つの脱原発法案が参議院で出そろうこととなった。3.11後も本気で脱原発政策が国会で討論されることはなかった。脱原発を求める野党連合と政府・自民党との間で、本気の論戦を国会で繰り広げ、野党間の連携によって参議院選挙前に参議院での統一法案の可決という目に見える形での成果を国民に示してほしい。そのことが、夏の参議院選挙で安倍原発推進内閣に痛打を浴びせ、脱原発勢力の躍進という結果につながるものと信ずる。