令和6年能登半島地震を踏まえた意見書提出

2024年1月23日

本日、脱原発弁護団全国連絡会は原子力規制員会宛に、能登半島地震を踏まえた意見書(原子力災害対策指針及び原発周辺自治体が策定した住民の避難計画の抜本的見直し並びにそれらが完了するまで全国の稼働中の全ての原発の運転停止を求める意見書)をe-govのシステムで原子力規制委員会に提出しました。参考までに、内閣官房、環境省、経済産業省に、同文を送信しました。16時より、東京の司法記者クラブにて会見を行いました。

海渡雄一弁護士は、今回の意見書は、脱原発弁護団全国連絡会全体会議で提起され、特に避難の問題に特化し、全国の弁護団から意見を出して起案したものであること、今回の地震の震源に珠洲原発が建設予定であり、もし建設されていたら、地震で壊れる前に木っ端みじんに壊れていた可能性があると指摘しました。大河陽子弁護士より、提出した意見書についての説明を行いました。河合弘之弁護士は、地震大国の日本で、原発事故が起きる原因は地震であるところ、建物倒壊や火事により、屋内退避などもできない、原子力災害対策指針は机上の空論だと述べました。また、モニタリングポストが計測できなければ、放射線量がわからないまま、避難についての指示を出すこともできない、原子力規制委員会は真剣に抜本的に指針を練り直し、機能するものにするまで原発の稼働は許されないと、意見書を提出した、記者の皆さまは規制員会に追及してほしいと締めくくりました。

司法記者クラブ(左から、河合弘之弁護士、大河陽子弁護士、海渡雄一弁護士)

20240123意見書 [PDF]

IWJ:「家屋倒壊で死か、放射能被害で死か、究極の選択!」原子力規制委「指針」は机上の空論と判明!~1.23 脱原発弁護団全国連絡会「能登半島地震を受け、全国の原子力発電所の即時停止を求める」記者会見 ―登壇:河合弘之弁護士、海渡雄一弁護士ほか 2024.1.23 *24/2/1追加


令和6年能登半島地震を踏まえた意見書
(原子力災害対策指針及び原発周辺自治体が策定した住民の避難計画の抜本的見直し並びにそれらが完了するまで全国の稼働中の全ての原発の運転停止を求める意見書)

原子力規制委員会 御中
同委員会委員長 山中 伸介 殿
同委員 田中 知 殿
同委員 杉山 智之 殿
同委員 伴 信彦 殿
同委員 石渡 明 殿

2024年1月23日

脱原発弁護団全国連絡会 共同代表 河合 弘之

同  海渡 雄一

1 令和6年能登半島地震による甚大な被害―家屋の倒壊、道路の寸断等

 本年1月1日に発生した令和6年能登半島地震(マグニチュード7.6、最大震度7)によって、甚大な被害が発生し、いまも被災地では懸命の救助活動、支援活動、復旧作業、避難生活が続いている。
同地震によって、3万7000棟以上にものぼる多数の家屋が倒壊、損傷し、火災も発生した。また、能登の大動脈といわれる国道249号を中心に道路も多数箇所で損壊、陥没等して寸断された。これによって孤立集落も多数発生した。志賀原発の半径30km圏では約400人が8日間孤立した。また、電話やインターネットがつながらなくなる通信障害も発生した。
 放射線量を計測するモニタリングポストは、18局で欠測した。

2 原発事故が重なった場合―住民は被ばくを強いられる

(1)同地震によって多数の家屋が倒壊、損傷し、道路も多数箇所で寸断されるなどの甚大な被害が発生している中で、もし能登半島に位置する志賀原発で放射性物質放出事故が発生した場合、住民らは、家屋の倒壊や度重なる強い揺れのために屋内退避(原子力災害対策指針は、UPZ(原発から約5km~30km圏)での屋内退避を原則としている。)をすることもできず、地震による火災によっても屋内退避ができず、土砂崩れや亀裂、陥没などによる避難経路の寸断のために避難することもできず、救助や支援物資・医療を受けることもできないで孤立し、放射性物質が漂う屋外で被ばくを強いられることになったであろう。
 避難することもできないため、安定ヨウ素剤の事前配布を受けていない地域では、安定ヨウ素剤の配布も受けられず、それを適時に服用することもできないこととなったであろう。
さらに、モニタリングポストの欠測のために放射性物質の拡散状況を把握できず、適切なタイミングでの避難指示や、放射線量の低い避難先の選択を行うこともできなかったであろうし、また通信障害のために、住民らに避難指示等を伝えることもできなかったであろう。
(2)全国の原発でも、今後、地震による原発事故が発生した場合、同じように、住民らは、避難することもできず、放射性物質から身を守る行動をとることもできず、被ばくを強いられることになるであろう。

3 原子力災害対策指針等は,地震による原発事故に対応できるものとなっていない

 つまり、原子力災害対策指針の定める、屋内退避、避難、安定ヨウ素剤の配布・服用のいずれも、地震による原発事故時において実行できないのである。
令和6年能登半島地震による被害の実態は、原子力災害対策指針、それに基づいて原発周辺自治体が策定した住民の避難計画が、地震による原発事故によって生じる事態を具体的に想定していないことを示している。

4 原子力災害対策指針と原発周辺自治体が策定した住民の避難計画の抜本的な見直すこと、見直しが完了するまで、全国の稼働中の全ての原発の運転を直ちに停止することを強く求める

 原発の安全性は、第1層から第5層までの各防護階層が独立して有効に機能することによって担保されることとなっている。
 第5層に当たる原子力災害対策指針及び原発周辺自治体が策定した住民の避難計画が、地震による原発事故時に実行できないことが明らかになったいま、当連絡会は、以下のことを、強く求める。
(1)原子力災害対策指針及び原発周辺自治体が策定した住民の避難計画を、直ちに、抜本的に見直すこと
(2)これらの見直しが完了するまでは、原発の安全性が確保されているとはいえないため、全国の稼働中の全ての原発の運転を直ちに停止すること

以上

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