速報 美浜原発差止認めず

2022年12月20日

本日12月20日、大阪地裁民事第1部(井上直哉裁判長、三宅知三郎裁判官、太田多恵裁判官)は、住民らの申立てを退け、関西電力に美浜原発原子力発電所の運転の差止を認めませんでした。決定文をアップしました。*12/21更新

大阪地裁前、旗を掲げる申立人ら。

決定要旨[PDF]

決定書(当事者目録略)[PDF] 76頁から裁判所の判断 *12/21更新

弁護団声明 [PDF] *15:44更新

弁護団声明

2022年12月20日
老朽美浜3号機運転禁止仮処分弁護団

1 本日、大阪地方裁判所第1民事部(井上直哉裁判長、三宅知三郎裁判官、太田多恵裁判官)は、老朽美浜原発3号機(以下「本件原発」という。)の運転を差止を求める申し立てを却下した(以下「本件決定」という。)。
2 本件決定は、債務者の言い分をそのまま認め、あるいは、債務者ですら主張していないことを指摘して、ことごとく債務者を救済している。とりわけ、「震源近傍敷地」の問題についていえば、裁判所は、「震源近傍」が何Kmなのかという判断を示さなかった。司法判断の放棄である。新規制基準の制定過程において「適用範囲について明確な議論はなされなかった」ことを根拠に、原子力規制委員会が本件原発敷地について「震源近傍敷地」であると判断しなかったことが「不合理であるとは言えない」と判断した。本件決定は、総論部分では、「債務者が原子力規制委員会の調査、審議、判断に不合理な点がないことを主張疎明しなければならない」と述べている。すなわち、債務者が、原子力規制委員会が本件原発敷地を「震源近傍敷地ではない」と判断したことに「不合理な点がない」ことを主張疎明できなければ、本件申立ては認容されなければならないのである。しかるに、裁判所は、「不合理であるとは言えない」として申立てを退けた。「不合理であること」の立証責任を債権者に課したのである。総論で示した判断枠組みと各論の判断内容が齟齬しているというお粗末さである。
3 老朽化の問題については、本件決定は「中性子照射脆化評価についての債務者の評価手法が不合理であるとはいえず、原子力規制委員会による審査に問題があるとは認められない」「主給水喪失と外部電源喪失が同時に起こった場合の対応についても、債権者らの主張は根拠に乏しいと言わざるを得ない」などとし、「新規制基準が定める高経年化対策以上に、本件発電所の安全性を厳格、慎重に判断しなければならないとする事情は認められない」旨判示した。しかし、型の旧(ふる)い原発が老朽化することでその危険性が高まることは自明のことである。本件決定は、福島第一原発事故においても型の旧さや老朽化が事故の発生や進展に寄与したことを無視し、福島第一原発事故の被害を忘却するものであって極めて不当なものである。
4 避難計画については、本件決定は「第1から第4までの各防護レベルの存在を捨象して無条件に放射性物質の異常放出が生ずるとの前提を置くことは相当ではない」と判示する。しかし、これは、原発の安全確保のために必要とされる深層防護の考え方が、第1から第5の各防護階層が独立して有効に機能することを求めることに全く反している。
 さらに本件決定は「避難計画に不備があるとも認められない。」と判示するが、本件原発の避難計画では避難先が大飯原発の立地するおおい町とされ、原発が密集する本件原発周辺地域における大地震による同時多発的な原発事故を想定していない問題や、避難経路の複数の箇所が土石流又は急傾斜地崩壊区域のレッドゾーン等に位置し脆弱であること、避難計画に基づいた避難をした際の住民の被ばく量が分からないなど、住民らが無用な被ばくをすることなく避難できる計画にはなっていないことに照らせば、本件決定は極めて不合理である。
5 裁判所が5か月以上をかけて作成した決定であるにもかかわらず、本件決定は余りに内容がない。福島事故の悲劇は、裁判官の頭の中では忘却されているかのようである。司法の役割を放棄したに等しい決定に我々は強く抗議する。老朽原発の運転に対する不安は、広く市民の中に拡がっている。我々は、老朽原発の運転を阻止すべく、今後も闘いを続けるものである。

以上

 

司法大観より

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