ミサイル攻撃の恐れ等を理由とする高浜原発運転差止め仮処分

2018年1月17日

 たいへん遅くなりましたが、ミサイル仮処分の報告です。来週1月23日に最後の審尋期日を予定しています。この裁判は、北朝鮮のロケット発射の際に、地下鉄や新幹線を停止したり、「避難訓練」を実施するのであれば、一番危険な原発を止めなくていいのか、という市民の素朴な疑問と深刻な危機意識を受けて、最も狙われる可能性の高いと言われる高浜原発に関し、少なくともミサイル攻撃の恐れ及び政府の破壊措置命令が取り消されるまでは、仮に止めておくことを求めています。

第3回審尋期日

 9月11日の第2回審尋期日後、11月1日11時より、第3回審尋期日が開かれました。裁判長は双方が提出した準備書面及び書証の確認をしました。その際に裁判所は、意見書の表現の意味や、「1万炉年」の定義など、率直に質問をしました。また、河合弁護士より、今回提出した準備書面の概要について口頭で説明しました。
 まず、「債務者(関電)の主張書面(2)の「第3」(12頁)は、債権者(住民側)が事態対処法はミサイルと関係ないと主張したと記載するものであるが、債権者はミサイルが事態対処法と関係ないとは主張していない。次に、同書面「第4」の「2」の確率論だが、原発の特殊性として日常生活では考えなくて良いほどの安全性を考えなくてはいけないという例えとして挙げたものである。(故意行為である)ミサイル攻撃について、100万年に1回等の確率論を用いるとは主張していない。」と説明しました。
続けて、債務者の主張書面(3)について、「北朝鮮とアメリカの政治情勢についてはいろいろな見方があるが、俗論は間違いであること、ただ、北朝鮮は日本とアメリカを一体とみていることは事実である。また、北朝鮮のミサイルが当たる確率について、北朝鮮は1発ではなく、多数連続攻撃してくること、昨今では相手の持っている数より多く撃つ「飽和攻撃」が通常であること、爆弾の威力を無視していること、(乙44を示して)同時多発の深刻な故障が起きること、半数必中界(CEP)のレポートが1年半前の資料を基にしていること、北朝鮮からのミサイルの威力・精度はここ1年で急激に向上していることから、反論をしたい。」と述べました。
 その後、今後の書面の提出の締め切り、日程などを確認しました。そして、次回期日が12月6日、次々回が翌年1月23日(最終)として、終えました。

審尋期日後、大阪地裁記者クラブにて

 その後、11:55頃より記者会見を持ちました。河合より期日でのやりとりや今後のスケジュール等について説明しました。債権者の水戸さんは、ミサイルに関しての避難訓練実施について、学校に対して抗議を行ったことや、期日(や書面)での、関電の原発を運転する事業者としての危機意識のあまりにも薄いことを指摘しました。

第4回審尋期日

 12月6日16時半からの審尋期日は、債権者(住民側)の今回提出した書面と、今後の債務者(関電)の反論書面の期限について確認しました。その後、河合より、準備書面の口頭説明を行いました。
 「準備書面(13)の半数必中界について(~10頁)、半数必中界とは銃や大砲など100発撃ったとき50発がどの範囲に収まっているかである。債務者は北朝鮮のミサイルの命中精度が2000m~3000mなど悪いと主張し、乙42の1の10頁には「last updated」が「2016年8月9日」とある。それ以降のデータが入っていない。陳腐である。この1年で北朝鮮のミサイルの命中精度は急進展した。北朝鮮の言う7mをそのまま信じるわけではないが、安全サイドに考えたらこれも想定しないといけない。50mという見方や、190mという見方がある。これは、韓国の軍隊が言っているのである。
 債務者の第3準備書面12頁の計算式(乙42の1 10頁 火器・爆薬ハンドブックの計算式)に基づいて算出してみた結果を、準備書面(13)の12頁に記載している。」


 次に、「飽和攻撃に関して、準備書面(13)の13頁にあるとおり、ミサイルが1発だけ飛んでくるかというと、そうではない。1発に対して1発を攻撃されたら終わりなので、一挙に攻撃するのが、飽和攻撃である。近代ミサイル戦の常道で、北朝鮮はできると言っているし、防衛白書にも記載がある。これを前提に安全性を考えないといけない。
 続いて、爆弾の威力については、通常兵器(核兵器は本件では除く)として、例えばせんこう榴弾は鋼鉄に穴を開けて内部で爆発するものである。また、クラスター弾は200×100mの範囲を制圧するなど多様な爆弾がある(15頁3行目)。規制基準は全く想定していない。ミサイルは鉄の塊だけでなく、爆弾が入っている。核兵器はきりがないので通常兵器のTNT火薬で計算した。」
 「準備書面(12)において、武力攻撃事態対処法について、関電は武力事態の認定がないと主張するが、当方の考えはミサイルの破壊措置命令が出ており、ミサイルの危険がある。武力事態でないからミサイルがとんで来ないという保証はない。」
今後、2018 年1 月16 日が債務者の反論締め切りであることを確認し、この日は終えました。

 

期日後、大阪地裁記者クラブにて。

 17時から記者会見を行い、審尋期日での概要を説明し、前回期日で、2018 年1 月23 日(火)10 時 第5 回審尋期日(終結予定)とされていることを報告しました。


ご参考:この間提出書面について

11月1日第3回審尋期日
債権者
準備書面(8)(被保全権利について)
準備書面(9)(ミサイル攻撃による原発稼働中と停止中の被害等違いについて)
準備書面(10)(自衛隊法82条の3と事態対処法の関係について)
準備書面(11)(本件原子炉と債権者の住所地との位置関係(距離))※プライバシーの観点からアップしません

債務者
主張書面(2)(債権者準備書面(3) , (10),(4)への反論)
主張書面(3)(債権者準備書面(5) , (9)への反論)

12月6日第4回審尋期日
債権者
準備書面(12)(主張書面2への反論-必要性他)
準備書面(13)(主張書面2、3への反論-国民保護法制、CEP他)


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