大飯・高浜仮処分 審尋期日報告

2015年10月14日

10月8日14時~17時、福井地方裁判所において、大飯原発仮処分事件の第5回審尋期日及び高浜原発異議審の第3回の審尋期日(非公開)が行われました。

高浜原発については、今年の4月14日の仮処分命令に対して関電が保全異議申し立てを行い、異議審に係属しています。仮処分命令の効果により、関電は再稼働することはできません。私たち脱原発弁護団全国連絡会はこの事件に集中的に力を入れて闘っています。

両者は裁判官が重なること、論点も重なることから、事実上、同じ期日に審尋を行っています。

前回の期日(9月3日)は裁判所の質問に対する債務者(関西電力)のプレゼンが行われました。

今回は同様に裁判所の質問に対して債権者(住民側)のプレゼンが行われました。

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裁判の前に福井地裁前を行進する弁護団、申立団、支援者のみなさま

 

冒頭に代理人弁護士海渡雄一より、高浜原発・大飯原発の危険性につき、福島原発事故には司法にも責任があり、裁判所はその判断が誤った場合にはどのような事故が発生しうるのか理解したうえで判断すべきであるとのプレゼンを行いました。具体的には福島県浪江町請戸の浜の悲劇、双葉病院事件、自死事件、飯舘村のふるさと喪失を述べ、司法に何が求められているかをうったえました。

続いて、大阪府立大学長沢啓行名誉教授より、「高浜3・4号と大飯3・4号の基準地震動について」プレゼンを行い、以下の内容について説明しました。
・震源を特定せず策定する地震動として参照する地震記録が決定的に不足していること。
・震源を特定せず策定する地震動として、地域地盤環境研究所の解析に基づく1,100ガルないしJNESの解析に基づく1,340ガルを採用すべきこと。
・耐専スペクトルの誤差の一部を地域性で説明できても、偶然変動による「倍半分」以上の誤差は残ること。
・本件大飯原発においても耐専スペクトルを適用すべきであり、断層モデルを用いた手法で基準地震動を評価すると2分の1以下の過小評価となること。
・断層モデル・レシピでは観測記録を再現できず、事後検証でも倍半分の誤差は不可避であること。
・「入倉式」によって地震モーメントを評価すると大幅な過小評価となること。
貴重な観測記録である2008年岩手・宮城内陸地震一関西の地下の強震動観測記録を債務者は無視していること等。

すなわち、関電の基準地震動の想定があまりに過小評価で危険であるということです。

引き続いて代理人弁護士甫守一樹より、「基準地震動問題について~質問事項への回答と主張のまとめ~」と題して、主に以下の内容につき補足説明を行いました。
・HKD020観測点の応答スペクトルは,Mw5.7に過ぎない同地震の一観測点でたまたま取れたものを元にしており,またわずか10年間の限られた観測地点におけるものであって,いずれ新しい観測記録によって更新されることは確実であるから,そのようなものをほとんどそのまま基準地震動とすべきではないこと。
・松田式,耐専式は地震の平均像を求めるものであり,それぞればらつきがあること。
・債務者が耐専式の不確かさの考慮として挙げる事項はそれぞれ生じうる可能性が十分あるものに過ぎない上,さしたる地震動の差異をもたらさないから,耐専式の最大5倍以上というばらつきをカバーできないこと。
・債務者のパラメータスタディが非保守的,恣意的であること。
日本地震学会において,基準地震動の年超過確率の精度や信頼性について大きな疑義が生じているとの意見が出ていること。
超過確率に地震学上の根拠はなく,実現象との関連性に乏しい虚構の数字であること等。

最後に代理人弁護士中野宏典、東京大学名誉教授・工学博士(金属材料学)井野博満、元東芝原子炉格納容器設計者・博士(工学)後藤政志より、「耐震安全性について~質問事項への回答と債務者への反論~」と題して主に以下の内容について説明しました。
・材料力学において,債務者のいう「安全余裕=余分な安全上の裕度」 というものは存在しないこと。
「安全率」は,安全性を脅かす諸々の不確定要素に対する備えとして設ける必要不可欠な「安全代」の比率であり,安全代があるから基準地震動を超えても安全だなどという議論は成り立たないこと。
限界値「u」と許容値「p」の間の差異は必要不可欠な安全代であり,債務者の主張するような余分な余裕ではないこと。
・実際には,高浜原発蒸気発生器のように,必要な安全代さえも削って許容値が設定されている箇所があること。
・ストレステストにおいては,さらに踏み込んだ限界値ぎりぎりの許容値が設定されていること。
・現実に働く力「a」は,基準地震動の不確実性やモデル化における不確実性などにより,実際に起こってみなければ分からないこと。
・許容値「p」と計算結果「c」との関係について,債務者自身,cがpよりもどの程度小さくなければならないという基準は存在しないと認めており,余裕とは到底呼べないこと。
・cは計算手法を変えることによりいかようにも定めることができ,実際にも許容値以下に抑えるために計算手法を操作した例が存在すること。
・債務者は,耐震安全余裕について“余裕を確保するよう努力している”と主張しているが,現実には“十分余裕をもって設計された”はずのものがこれまでに何度も事故を起こしていること。
・債務者はそのことを説明できておらず,債務者の説明は願望,あるいは幻想(=現実から目を背けた安全神話)にすぎないこと。
・債務者はタービン・ミサイルや座屈,脆性破壊など,機能喪失限界値の多様性を説明していないこと。
・施工や保守管理には不確実性が存在し,現実にそれが事故につながっているし,過酷事故いもつながり得ること。

休憩をはさんでプレゼンは約3時間に及びましたが、4人の裁判官は熱心にメモをとりながら聴いていました。裁判所は次回審尋期日を指定して終了しました。

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今回プレゼンを行った長沢先生、井野先生、後藤先生(左から)。

今回は私たちは10時より事前の記者レクを行いました。多くの記者が参加し、関心の高さがうかがわれました。

審尋期日終了後、フェニックスプラザにて記者会見・報告集会が行われました。多くの報道関係者、県内外から支援者が集まりました。

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期日後の記者会見・報告集会

 

関電は11月上旬に再稼働と喧伝していたようですが(このこと自体、あまりにも司法軽視の態度ですが)、今回の期日で、裁判所は次回予定としていた11月13日の審尋期日を正式に行うと指定しました。したがって11月上旬の再稼働は不可能となりました。

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申立人代表の今大地さん:関電側から11月二は再稼働という雰囲気がひしひしと感じられていたが、ひと安心。強気で闘っていく!

 ( 記者会見・報告集会の詳細、この間提出された書面などは【大飯高浜仮処分福井支援の会】サイトをご覧ください。)

支援者・参加者からも積極的な質問がなされました。次回11月13日は決定的に重要な期日となります。ぜひ次回審尋期日には福井地裁前にお集まりください。期日自体は非公開ですが、多くの方が集まってくださることで、この事件の関心の高さのアピールになります。

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